
しかし、その実態は国との真剣な契約であり、甘い気持ちで足を踏み入れると痛い目を見る。。
多くの経営者が「これくらいなら許されるだろう・・」と自分勝手な解釈をして申請を出し、結果として不採用の通知を受け取って肩を落とす姿を何度も見てきた。つまり、業務改善助成金でNGとされるパソコンや車両の購入はいくつもの注意すべき項目がある。
本気でこの助成金を手に入れたいのであれば、まずは表面的なルールだけでなく、その裏側にある「国の本音」を理解しなければならない。
記事のポイント
- 汎用品はNG:事務用PCや一般的な乗用車は原則として対象外。
- 特例の確認:30人未満の事業場など、条件次第でPC購入が可能。
- 専用性が重要:福祉車両や特殊機材など、業務に不可欠なものは対象。
- 私用不可:仕事以外でも使える「汎用性の高いもの」は審査が厳しい。
目次
業務改善助成金でパソコン&車両は対象になるのか?

単に欲しいものを買うための制度ではないという点を、まずは頭に叩き込む必要がある。
国がなぜパソコンや車にお金を出してくれるようになったのか、その背景を深く考えることが大切だ。
業務にパソコンや車両は必要だが何でも買っていいわけではない!
以前はパソコンのような「どこでも誰でも使えるもの」は、仕事以外にも使えるために対象外とされていた時期が長かった。
しかし、今の時代にパソコンなしで仕事の効率を上げることは不可能に近い。だからこそ、国は大きな決断をしてこれらを対象に含めたのだ。だが、それは「何でも買っていい」という許可証ではない。
その道具を使うことで、どれだけ作業の時間が短くなるのか、どれだけ従業員が楽になるのかを証明できなければ、一円も出してもらえない。
事業場の中で一番低い時給が1000円より低い条件が必要
さらに、この制度を使えるのは「事業場の中で一番低い時給が1000円より低い」という条件を満たしている場所に限られている。
これは、本当に困っている小さな会社やお店を助けたいという国の意思表示だ。すでに高い給料を払っている余裕のある会社は、自分たちの力でパソコンを買いなさい、という厳しいメッセージでもある。
自分の会社が今、どの立ち位置にいるのかを冷静に見極めることが、最初の出発点となる。
業務改善助成金でパソコンや車両購入時にやりがちなNG項目10選!

ここでは、多くの人が無意識にやってしまう致命的な失敗を、私の個人的な視点からあぶり出していく。
1. 単なる「古くなったから買い替え」はNG
多くの経営者が口にする「パソコンが古くて動きが遅いから新しいのが欲しい」という理由は、実はこの助成金では最悪の回答の一つだ。
国が求めているのは「現状維持」ではなく「改善」である。古いものが壊れたから直す、古くなったから新しくするというのは、経営者として当然の義務であり、それは助成金に頼らず自分のお金でやるべきことだと見なされる。
大切なのは、新しいパソコンを入れることで「今までできなかった何ができるようになるのか?」という点だ。
例えば、今まで手書きで計算していた在庫管理を、新しいパソコンとソフトを使って自動化し、作業時間を毎日一時間減らすといった具体的な変化が必要だ。
ただ新しくなるだけでは、それは単なるお買い物であって、業務改善とは呼ばない。この違いを理解していない申請は、その時点でゴミ箱行きが決まったようなものだ。
2. 汎用性が高すぎる私的な利用が疑われるケース

業務改善助成金
パソコンや車は、仕事以外でも簡単に使えてしまう。
ここが審査員が最も目を光らせているポイントだ。例えば、最新の超高性能なゲーミングパソコンを「事務作業用」として申請したらどうなるだろうか?
誰が見ても「仕事が終わった後にゲームをするつもりだろう・・」と疑われる。。また、真っ赤なスポーツカーを配送用だと言い張っても、そこには無理がある。
審査員はあなたの会社の「誠実さ」を見ている。その道具が本当にその仕事に必要なスペックなのか、それとも社長の趣味が入っているのかは、書類を見れば一瞬で見抜かれる。あまりにも自分の好みを優先させた道具選びは、信頼を失うだけでなく、会社全体の姿勢を疑われる原因になる。
誰が見ても「その仕事にはそれが必要だ!」と納得させられる論理的な説明が求められるのだ。
3. 交付決定の前に購入や契約をしてしまう
これは初心者によくある、そして最も取り返しのつかないミスだ。
助成金の世界には「交付決定」という言葉がある。これは、国が「あなたに助成金を出すことを決めました」という正式な合図だ。この合図が出る前に、一枚の注文書を書き、一円のお金を払っただけでも、その瞬間に助成金を受け取る権利は消滅する。
多くの人は、早く新しい道具が欲しくて我慢できずに買ってしまう。
あるいは、業者の「後からでも大丈夫ですよ」という無責任な言葉を信じてしまう。しかし、ルールは絶対だ。国は「今あるお金で何とかできるなら、助成金は必要ないよね」と考える。だからこそ、お金を払う前に「助成金がなければ買えません」という姿勢を見せ続けなければならない。
この待つ時間も、経営者としての忍耐力が試されているのだ。
4. ネットオークションやフリマアプリでの購入
最近はメルカリやヤフオクで安く中古品を手に入れるのが当たり前になっているが、助成金ではこれは通用しない。
なぜなら、そこには「透明性」がないからだ。国が税金からお金を出す以上、その取引が適正な価格で行われ、誰から誰に流れたのかが完璧に証明されなければならない。
個人からの購入は、領収書があったとしてもその信ぴょう性を疑われる。また、中古品の相場がはっきりしないため、不正にお金を水増ししているのではないかという疑いをかけられやすい。
正規の販売店から、正式な見積書と納品書、そして領収書を受け取ること。これが鉄則だ。少しでも安く済ませようというケチな根性が、数百万円の助成金を台無しにすることもある。
5. 領収書や証拠書類の不備
書類の不備は、審査員に対する「私はいい加減な人間です!」という自己紹介のようなものだ。
宛名が空欄の領収書、何を買ったのかわからない請求書、日付が矛盾している納品書。これらが一つでもあるだけで、審査は止まってしまう。審査員は毎日膨大な量の書類を見ており、不備のある書類を見つけると、それだけでその申請を後回しにするか、落とす理由を探し始める。
書類は、物語のように繋がっていなければならない。
見積もりがあり、国からの許可があり、注文があり、納品があり、そして支払いがある。この時間の流れが一本の線として繋がっていることを、第三者が一目で理解できるように整理すること。これができない経営者に、国の大事なお金を預けることはできないというわけだ。
6. 法定耐用年数を超えた中古車の購入
中古の車などを買う時に注意が必要なのが、その寿命だ。
国は、長く使えるものに投資をして、会社を長く成長させてほしいと考えている。そのため、買ってすぐに壊れてしまうような古いものにはお金を出したくないのが本音だ。
特に中古車の場合、あまりに古いモデルだと「本当にこれで業務改善が続けられるのか」と疑問を持たれる。
さらに、税法上の耐用年数という小難しい決まりがあり、それを無視した購入計画はプロの目から見れば一発でアウトだ。中古を選ぶなら、まだ新しさが残っていて、これから何年もバリバリ働いてくれることが確実なものを選ばなければならない。
安さだけを追求した中古品選びは、結局は高くつくことになる。
7. 関連会社や親族経営の会社からの購入
身内から物を買って、国のお金を身内で回そうとする行為は、最も厳しくチェックされる。
これは「利益供与」と呼ばれ、不正の温床になりやすいからだ。例えば、社長の弟がやっている車屋からトラックを買うといったケースだ。たとえそれが市場価格であっても、そこに特別な感情や裏取引がないことを証明するのは非常に難しい。
助成金をもらうなら、全く関係のない第三者の会社から買うのが一番清潔だ。
もしどうしても身内から買わなければならない特別な理由があるなら、他社からも見積もりを取り、なぜそこでなければならないのかを、誰が聞いても納得できるように説明しなければならない。疑われるようなことは最初からしない、それが賢い経営者の選択だ。
8. 賃金引き上げ計画が未達または遅延している
業務改善助成金は「道具をあげるから、給料を上げてね」という約束だ。
道具だけもらって、給料を上げる約束を守らないのは、ただの泥棒と同じだ。給料を上げるタイミング、上げる金額、対象となる人数。これらをあらかじめ約束し、それを確実に実行しなければならない。
もし経営が苦しくなって給料を上げられなくなったとしても、国は「そうですか・・」とは言ってくれない。
一度決めた約束は、何があっても守る。その覚悟がないなら、最初からこの助成金に手を出してはいけない。給料を上げたことを証明する賃金台帳の数字一つ一つが、あなたの誠実さを証明する証拠となる。
9. 自動車の定員や車種が事業実態と合わない

業務改善助成金
例えば、一人でやっている配達の仕事なのに、7人乗りの大きなミニバンを申請したらどうなるか?
あるいは、荷物を運ぶ仕事なのに、高級なセダンを申請したらどうなるか?誰が見ても「家族旅行に使うつもりだろう・・」「自分の見栄のために乗るんだろう・・」と思われる。
車両の申請で大切なのは「なぜその形でなければならないのか?」という必然性だ。
荷物の量、配送のルート、道幅、燃費。これらを積み上げて、消去法でその車種しか残らない、というくらいまで理詰めで選ぶ必要がある。あなたの好みは横に置いて、仕事が一番喜ぶ車を選ぶことだ。
10. パソコンの台数が従業員数を超えている
従業員が3人しかいないのに、5台のパソコンを申請する。これは明らかな矛盾だ。
予備のパソコンが欲しいという気持ちはわかるが、助成金は「今、目の前にある課題」を解決するためのものだ。未来の予備のためにお金を出してくれるほど、国は甘くない。
また、アルバイトも含めた全員がパソコンを使う仕事なのかどうかも厳しく見られる。
現場で作業する人たちばかりの職場なのに、全員分の最新タブレットを申請しても、「本当に使うのか?」と疑われる。必要な人に、必要な分だけ。欲張りすぎると、本来もらえるはずだった分まで全て失うことになる。
パソコンやタブレット購入時の具体的な注意点

パソコンを選ぶ時に最も重要なのは、その「心臓部」である性能が、あなたの会社のソフトや作業に見合っているかどうかだ。
動画を編集するわけでもないのに、プロ仕様の超高性能パソコンを申請しても、それは過剰投資だと判断される。逆に、重いソフトを動かす必要があるのに、安物のパソコンを申請すれば、「これで本当に効率が上がるのか?」と不信感を持たれる。
また、マウスやキーボードといった消耗品に近いものは対象外になることが多い。
どこまでが助成金の対象で、どこからが自腹なのかを明確に分けておく必要がある。さらには、パソコンを入れることで「どのソフトを使い、どう仕事の流れが変わるのか」というシナリオを丁寧に作ることが、審査を通るための最大の近道だ。
ポイント
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原則対象外と特例の確認:PC等は私用転用が可能な「汎用品」とみなされ、原則対象外だ。ただし、従業員30人未満かつ事業場内最低賃金が低い等の「特例」に該当する場合のみ例外的に認められる。
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ソフトとのセット導入:単体購入ではなく、生産性向上に直結する専用ソフトやシステムとセットで導入し、その必要性を論理的に説明せよ。
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財産処分の制限:導入後、法定耐用年数期間内は売却や廃棄が制限され、適切な管理が義務付けられる。
車両購入時の具体的な注意点

車を買う目的が、単なる移動手段であってはいけない。
その車があることで、今まで一日3軒しか回れなかった配達が5軒に増える、あるいは今まで積めなかった大きな機材を運べるようになることで、外注費が減るといった「利益に直結する理由」が必要だ。
さらに、リースの場合は注意が必要だ。
この助成金は原則として「購入」を前提としている。長く自分のものとして使い続け、会社を支える資産にすることを求めているからだ。リース契約の内容によっては対象外になることもあるため、契約書の中身を隅々まで確認し、少しでも不安があれば事前に役所に確認を取る勇気を持つべきだ。
ポイント
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汎用性の排除と特例の確認:乗用車や軽自動車などの一般的な車両は、私用や通勤に転用できる「汎用品」とみなされ、原則として助成対象外である。ただし、従業員30人未満かつ事業場内最低賃金が低い等の条件を満たす小規模事業者に限り、貨物自動車(トラックやバン)が特例で認められる場合がある。
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「生産性向上」の論理的根拠:単なる移動手段としての購入は認められない。積載量の拡大による配送効率の向上や、冷凍冷蔵機能による品質保持など、導入によって「どのように労働時間が短縮され、生産性が上がるか」を数値や図解で証明する必要がある。
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特殊車両の優位性:福祉車両(リフト付き)や建設用特殊車両、キッチンカーなどの「専用性が高い車両」は、一般車両に比べて認められやすい傾向にある。
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厳格な手続きと管理:交付決定前の発注・契約は厳禁だ。必ず決定後に購入すること。また、導入後も私用転用は一切認められず、走行記録や管理簿の作成が義務付けられる点に留意すべきである。
最後に統括

NG項目を一つずつ丁寧に潰していく作業は、自分の会社の経営を見つめ直す作業そのものでもある。
ルールを形式的に守るのではなく、そのルールの向こう側にある「より良い社会を作りたい」という国の意図を汲み取ること。そうすれば、自然と書くべき言葉が見えてくるはずだ。
厳しい審査を乗り越えて手にしたパソコンや車は、ただの道具以上の価値を持つだろう。それは、あなたの会社が公に認められ、成長を約束された証なのだから。


