
経営が行き詰まっているのに、銀行の支援や国の助けを借りて、かろうじて生きている会社のことだ。
そんなゾンビ企業がどう言う理由で、なぜ潰れないのか?そして、潰すべきとの意見も世には出ている。この記事では、なぜそのような会社が日本にたくさん残っているのか?そしてなぜそれが問題なのか?を、独自の視点で深く掘り下げていく。
世の中のきれいごとだけではない、泥臭い裏側まで踏み込んで解説しよう。
記事のポイント
- ゾンビ企業とは稼ぎで利息すら払えない実態
- 国や銀行の支援による無理な延命
- 日本全体の賃上げと成長の停滞
- 金利上昇によるついに始まる淘汰
目次
そもそもゾンビ企業の定義とは?

しかし、現実には倒産することなく、今日もシャッターを開け業務を続けている。この不思議な現象を理解するためには、まず「何をもってゾンビとするのか?」という基準を知る必要がある。
利益で借金の利息すら払えない苦しい台所事情・・
ゾンビ企業を判別する最も有名な基準は、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」という指標だ。
これは難しい言葉だが、簡単に言えば「本業で稼いだお金で、借金の利息を払えているか?」というものだ。

インタレスト・カバレッジ・レシオ
出典野村證券
この数字が3年以上続けて1を下回っている、つまり稼いだお金よりも利息の支払いの方が多い状態が続くと、その会社はゾンビ企業だと呼ばれるようになる。
自分の生活に置き換えて考えてみると、その異常さがよくわかる。毎月の給料をすべて使っても借金の利息すら返せず、生活費をさらに借金でまかなっている状態だ。
普通ならすぐに生活が破綻するはずだが、企業の場合はなぜかこれが何年も許されてしまうことがある。
日本のゾンビ企業は増え続けているという衝撃・・
現在、日本にはゾンビ企業が25万社以上あると言われている。
これは全企業の1割を大きく超える数字だ。特に最近の数年間は、世界的な病気の流行によって、国が大規模な資金援助を行った。
その結果、本来なら淘汰されるはずだった弱い会社までが、国のお金で延命してしまった側面がある。
街を歩いていて、客が入っていないのに何年も潰れないお店を見かけることはないだろうか。その裏側では、私たちが知らない複雑な仕組みが動いている。
見た目は普通の会社でも、中身はすでにボロボロで、自分たちの力では一歩も前に進めない会社が、今の日本にはあふれているのだ。
なぜ潰れないのか?ゾンビ企業が生き残れる3つの裏事情

そこには、単なる経済の論理だけでは説明できない、日本特有の「優しさ」や「しがらみ」が複雑に絡み合っている。ここでは、表に出てこない本当の理由を解き明かしていく。
国や自治体による強力な資金繰りの支え
ゾンビ企業が生き残れる最大の理由は、国による支援策だ。
特にここ数年は、実質無利子・無担保で融資を受けられる仕組みが整えられた。これにより、赤字続きの会社でも「とりあえずの現金」を手にすることができた。
国としては、急激な倒産を増やして社会が混乱するのを防ぎたかったという事情がある。
しかし、この支援は「延命治療」に過ぎない。病気を治すための手術ではなく、ただ痛みを和らげる薬を与え続けているようなものだ。お金を貸す側も、いつか返ってこないことは薄々分かっていながら、公的な保証があるために、つい貸し出しを続けてしまう。
この甘い構造が、自力で歩けない企業を温存させている。
銀行が倒産を避けたがる
銀行にとって、貸している会社が倒産することは、自分たちの成績に大きな傷がつくことを意味する。
もし倒産してしまえば、貸したお金を「損失」として計上しなければならない。それを避けるために、銀行は返済期限を延ばしたり、利息を下げたりする。
これをリスケジュールと呼ぶが、実質的には借金の先送りだ。
銀行員も人間だ。自分が担当している間に倒産させて、自分の評価を下げたくないという心理が働く。また、地方の銀行であれば、地域の有力な会社を潰すことへの批判を恐れる。
こうして、銀行と企業が「倒産させない」という一点で協力し合う不思議な関係が出来上がる。
雇用を守るという大義名分と地域経済のしがらみ
会社が潰れると、そこで働いている人は職を失う。
特に地方都市では、一つの会社が潰れることが、街全体の活力を奪うことにつながりかねない。政治家にとっても、失業者が増えることは避けたい事態だ。
そのため、「雇用の維持」を旗印にして、無理な支援が続けられることになる。しかし、ここで立ち止まって考える必要がある。その会社で働き続けることが、本当に従業員の幸せなのだろうか?
給料も上がらず、将来性もない場所にしがみつくことは、新しい技術を学んだり、成長している分野に移動したりするチャンスを奪っているとも言える。
守っているつもりが、実は飼い殺しにしているという現実がある。
「ゾンビ企業は潰すべき!」という意見が出るのはなぜ?

一見すると冷酷に聞こえる「潰すべき」という主張の裏には、これからの日本が生き残るための切実な危機感がある。なぜ新陳代謝が必要なのか?その理由を深く掘り下げていこう。
日本全体の生産性が上がらないから
日本には事業承継先が見つからず廃業予定の会社が261万社もあるとか言ってたが、そのうちどれだけが事業を承継し存続させる価値のある会社なのかといった事は言わない。
その多くは潰すべきゾンビ企業の可能性が高いのに。#NHKスペシャル pic.twitter.com/TgFmUHmx49— 🗻マウントエレベスト🗻 (@sgmt8848) February 2, 2025
日本人の給料が30年近く上がっていない大きな原因の一つに、ゾンビ企業の存在がある。
限られたお金や道具、そして優秀な人材が、利益を出せない古い会社に縛り付けられているからだ。もし、これらの経営資源が、成長している新しい産業に移動すれば、日本全体の稼ぐ力は一気に高まるはずだ。
ゾンビ企業は、本来ならもっと高い価値を生み出せるはずの資源を「停滞」させている。
これは、古い水が溜まって腐ってしまう池のような状態だ。新しい水を入れるためには、まず古い水を抜かなければならない。
この「入れ替え」が行われないことが、日本経済が停滞し続けている根本的な原因だと言える。
労働力不足を加速させる人材の抱え込み
日本は産業構造の転換をしなければいけないのに
アベノミクスによる円安で、潰すべきゾンビ企業を温存させた
そのしわ寄せが中小企業に行き、中小企業が潰れてしまった
今もゾンビ企業を活かす為、インボイス廃止等により、日本の産業を支えてる中小企業が犠牲になっている— エスプリモ@ 江戸回帰派 (@ESPRIMO7) May 3, 2024
今の日本は、どこもかしこも人手不足だ。
成長しているIT企業やサービス業では、人が足りなくて困っている。その一方で、ゾンビ企業では、特に仕事がないのに雇用が維持されているケースが多い。
これは、労働力の無駄遣い以外の何物でもない。
働き手からしても、沈みゆく船に乗っている時間は、自分の人生の貴重な時間を捨てているのと同じだ。成長産業に移れば、もっと高い給料をもらえ、スキルも磨けるはずの人が、ゾンビ企業に留まることでその機会を失っている。
労働力の流動化を妨げているゾンビ企業の存在は、日本全体の首を絞めているのだ。
未来の芽を摘み取る不公平な競争環境
ゾンビ企業が公的な支援で生き残ることは、真面目に努力して利益を出している会社にとって、極めて不公平な状況を作り出す。
ゾンビ企業は利益を度外視して安値で仕事を請け負うことがあるため、適正な価格で勝負している健全な会社の邪魔をしてしまうのだ。
また、新しい会社(スタートアップ)が市場に参入しようとしても、ゾンビ企業がシェアを握りしめていると、入る隙間がない。古い会社が居座り続けることで、次世代のリーダーとなるべき会社が育たない。
これは、大きな木が日光を遮って、下の苗木が育たない森のようなものだ。森全体を若返らせるためには、寿命を迎えた木には倒れてもらうしかない。
ゾンビ企業であり続けることのデメリットとリスク

一時的に倒産を免れているだけで、中身はどんどんボロボロになっていくからだ。ここでは、延命を続けることで生まれる具体的な悪影響について解説する。
従業員の給料が上がらない負のスパイラル
ゾンビ企業の最大の問題は、利益が出ないために、従業員に還元する余裕が全くないことだ。
物価が上がっている今の世の中で、給料が変わらないことは実質的に生活が苦しくなることを意味する。どれだけ一生懸命働いても、会社に稼ぐ力がないため、報われることがない。
このような環境では、社員のモチベーションも上がらない。優秀な人から先に辞めていき、最後には他へ行く場所がない人だけが残る。
そうなると、会社の力はさらに弱まり、ますます利益が出なくなるという最悪の負のスパイラルに陥る。ゾンビ企業にいることは、自分の未来を安売りしているのと同じだ。
設備投資ができず時代の波に取り残される
稼いだお金をすべて借金の利息に回しているゾンビ企業には、新しい機械を買ったり、新しいシステムを導入したりするお金がない。
今の時代、IT化やAIの活用は避けて通れないが、ゾンビ企業はそれについていくことができない。
その結果、仕事の効率はますます悪くなり、健全な他社との差は広がるばかりだ。10年前、20年前と同じやり方を続けているため、今の顧客が求めるスピードや質に応えられなくなる。
時代の変化から取り残された会社は、もはや顧客にとっても価値のない存在になってしまう。
突然の連鎖倒産を引き起こす
ゾンビ企業の延命は、ある日突然、終わりを迎える。銀行や国が「これ以上の支援は無理だ!」と判断した瞬間、一気に倒産が現実のものとなる。
その時、一番困るのはその会社と取引をしている会社だ。お金が払われないことで、取引先までもが共倒れになってしまう。
長く延命すればするほど、その時の衝撃は大きくなる。早めに整理をしていれば被害を最小限に抑えられたものが、無理に引き延ばしたせいで、多くの人を巻き込む大事故になる。
ゾンビ企業を放置することは、いつ爆発するか分からない爆弾を街の真ん中に放置しているようなものだ。
今後はゾンビ淘汰が本格化するのか?

世界的な経済の変化や、日本国内の政策転換により、もはや隠し通すことができない限界が来ているのだ。これから何が起きるのか、私たちは何に備えるべきかを考える必要がある。
長く続いたゼロ金利の時代が終わり、日本でも少しずつ金利が上がり始めている。これはゾンビ企業にとって致命的な打撃となる。
これまでわずかな利息で済んでいた借金の負担が、金利の上昇によって一気に跳ね上がるからだ。
稼ぎがない会社にとって、利息の支払いが少し増えるだけでも、即座に倒産を意味する。銀行も、自分たちの利益を守るために、返せない会社への貸し出しを厳しくせざるを得ない。
これまでは温かかった銀行の対応が、一気に冷たい風に変わるだろう。これが、本当の意味での「ゾンビ淘汰」の引き金になる。
国の支援策が延命から再編へシフト
国もようやく、ただお金を貸すだけでは解決しないことに気づき始めた。
これからは、無理に会社を残すのではなく、他の会社と合併させたり、別の事業に作り替えたりすることを支援する方向へ変わっていく。
また、失業者が新しい仕事を見つけるための学び直しの支援にも力を入れるようになる。
これは、「会社を潰さない」ことよりも「人を活かす」ことに重きを置くようになったということだ。たとえ今の会社がなくなっても、働いている人が別の場所で輝けるなら、そちらの方が社会全体にとって良いという考え方だ。
痛みを伴うが、健全な姿に戻るための避けて通れないステップだと言える。
会社がゾンビ化しているかどうかを見極めるのは、経営者だけの仕事ではない。そこで働く私たち自身が、自分の会社を冷静に見つめる必要がある。
「うちの会社は大丈夫だろうか・・?」という疑問から目を逸らさず、もし危ないと感じたら、早めに次の準備をすることが大切だ。
今の時代、一つの会社に一生を捧げるのが当たり前ではない。会社がゾンビのように生き残ることにしがみつくのではなく、自分が価値を生み出せる場所へと動く勇気が必要だ。
国や会社に頼るのではなく、自分のスキルを磨き、変化に対応できる力をつけることこそが、最大の防衛策になる。
最後に統括

しかし、その優しさが結果として、日本全体の活力を奪い、そこで働く人の未来を暗くしている事実は否定できない。
これから訪れる「金利のある世界」では、本物の実力がある会社だけが生き残り、そうでない会社は退場を迫られることになる。
これは一見すると厳しいことのように思えるが、新しい時代を作るためには必要な通過点だ。古い皮を脱ぎ捨てることで、新しい皮膚が生まれるのと同じように、日本経済も新しく生まれ変わる必要がある。
私たちは、この大きな変化の流れを止めることはできない。ならば、その流れを正確に理解し、自分がどう生きるべきかを考えるべきだ。
ゾンビ企業という存在を通して、私たちは「働くことの意味」や「本当の豊かさ」を問い直されているのかもしれない。



